目次
1. 衝撃のデータ──2050年、2世帯に1世帯がおひとり様に
こんにちは。遺言相続専門の行政書士です。前職は高槻市役所の市民課で、戸籍届出や市営葬儀、市営墓地の受付対応をしてきました。
2026年1月9日、朝日新聞に掲載された記事で、日本の世帯構造に関する衝撃的なデータが報じられました。
【重要データ】
・全世帯に占める単身世帯の割合:2050年に44.3%
・65歳以上の一人暮らし男性に占める未婚者の割合:2020年約34%→2050年約60%
・配偶者も子どももいない高齢者が多数派に
これは、2050年には「2世帯に1世帯近くがおひとり様になる」ことを意味しています。
日本福祉大学の藤森克彦教授(社会保障論)が指摘するように、「老後を家族に頼ることが難しくなる」時代が、確実に到来しているのです。
2. なぜ日本のおひとり様は「友人や近所に頼らない」のか
記事の中で特に注目すべきは、内閣府の国際比較調査の結果です。
「病気の時や日常生活で困った時に誰に頼れるか」
この質問に対して、日本の単身高齢者は、アメリカ・ドイツ・スウェーデンと比べて「友人」や「近所」に頼る人の割合が著しく低いという結果が出ています。
なぜ日本人は頼らないのか?
藤森教授は、この背景に「人様に迷惑をかけてはいけない」という規範意識が強く影響していると分析しています。
確かに、日本では子どもの頃から「他人に迷惑をかけないように」と教育されてきました。この美徳が、逆に高齢期の社会的孤立を生んでいる可能性があるのです。
しかし、本当に「誰にも頼らない」ことが正しいのでしょうか?
3. 市役所での経験から見えた「身寄りのない高齢者」の現実
私が高槻市役所の市民課で勤務していた時、おひとり様が亡くなった後の手続きで困難に直面するケースを数多く目にしてきました。
実際にあったケース
ケース①:葬儀の手配ができない
身寄りのない方が亡くなり、誰も葬儀の手配をする人がいない。遠い親戚を探すのに数週間かかり、葬儀が大幅に遅れた。
ケース②:賃貸物件の退去・遺品整理
おひとり様が賃貸住宅で亡くなった後、誰も遺品整理や退去手続きをする人がおらず、大家さんや不動産会社が対応に苦慮。
ケース③:財産が国庫に帰属
相続人が一人もおらず、遺言書もなかったため、ご本人が一生懸命貯めた財産がすべて国のものになってしまった。
これらのケースを見るたびに、「生前にきちんと準備しておけば防げたのに」と思わずにはいられませんでした。
4. 家族がいても「身寄りがない」状態になる理由
実は「身寄りがない」状態は、家族がいても起こり得ます。
「身寄りがない」とは?
・家族はいるが疎遠で頼れない
・子どもはいるが遠方に住んでいて頼みづらい
・配偶者はいるが同年代で共倒れのリスク
・親戚はいるが高齢で頼れない
「家族がいる=安心」とは限らないのです。
特に50歳以上のおひとり様の場合、親戚も高齢化しており、いざという時に頼れる人が実質的にいないケースが多いのです。
5. おひとり様が今すぐ始めるべき5つの備え
では、具体的にどのような備えをすればいいのでしょうか。遺言相続専門の行政書士として、おひとり様におすすめする5つのステップをご紹介します。
ステップ①:財産目録を作成する
まずは自分の財産を「見える化」しましょう。
・預貯金(銀行名・支店名・口座番号)
・不動産(土地・建物の所在地)
・有価証券(株式・投資信託など)
・生命保険
・負債(ローンなど)
・デジタル資産(ネット銀行・仮想通貨など)
ステップ②:遺言書を作成する
おひとり様にとって、遺言書は必須です。
遺言書がないと、法定相続人がいない場合、財産はすべて国庫に帰属してしまいます。
遺言書を作成しておけば、
・お世話になった友人に財産を譲る
・支援している団体に寄付する
・内縁のパートナーに残す
など、自分の意思を反映できます。
ステップ③:死後事務委任契約を結ぶ
死後の手続き(葬儀・納骨・役所への届出・賃貸の解約など)を、信頼できる専門家に事前に依頼しておく契約です。
おひとり様の場合、これがないと誰も手続きをしてくれません。
ステップ④:任意後見契約を検討する
将来、認知症などで判断能力が低下した時に備えて、信頼できる人に財産管理や契約行為を任せる契約です。
おひとり様こそ、元気なうちに準備しておくべき制度です。
ステップ⑤:エンディングノートを書く
法的効力はありませんが、ご自身の希望を記録しておくことは非常に重要です。
・葬儀の希望(宗教・規模・予算)
・お墓の希望
・延命治療の希望
・連絡してほしい人のリスト
・ペットがいる場合の引き取り先
・SNSやデジタルデータの取り扱い
6. 遺言書がない場合のリスク──財産が国のものに
おひとり様にとって最も知っておくべきことは、「遺言書がないと、財産が国のものになる可能性がある」ということです。
相続の法的プロセス
①相続人の調査
②相続人が一人もいない場合→相続財産管理人の選任
③特別縁故者(内縁のパートナーや親しい友人など)の申し立て
④特別縁故者もいない場合→国庫帰属
実際に、身寄りのない不動産の国庫帰属件数は年々増加しています。
遺言書があれば防げる
遺言書を作成しておけば、財産の行き先を自分で指定できます。
・お世話になった友人
・支援したいNPO法人
・母校への寄付
・内縁のパートナー
一生懸命働いて貯めた財産を、自分の意思で活かすことができるのです。
7. 死後事務委任契約と任意後見契約の重要性
おひとり様の終活において、遺言書と同じくらい重要なのが「死後事務委任契約」と「任意後見契約」です。
死後事務委任契約とは
死後の様々な手続きを、生前に専門家に依頼しておく契約です。
具体的な内容:
・葬儀・火葬の手配
・納骨・埋葬の手配
・役所への届出(死亡届・年金停止など)
・賃貸物件の解約・遺品整理
・公共料金の解約
・SNSアカウントの削除
任意後見契約とは
将来、判断能力が低下した時に備えて、財産管理や契約行為を任せる契約です。
具体的な内容:
・銀行口座の管理
・医療・介護契約の締結
・施設入所の契約
・不動産の管理
おひとり様の場合、これらの契約がないと、いざという時に誰も動いてくれません。
8. 「迷惑をかけたくない」からこそ、今備える
日本人特有の「人様に迷惑をかけたくない」という気持ちは、とても素晴らしいものです。
しかし、何も準備せずに亡くなってしまうと、逆に周りの人や社会に大きな負担をかけることになります。
・大家さんや不動産会社が遺品整理に困る
・行政が財産管理人の選任に時間とコストをかける
・遠い親戚が突然呼び出されて困る
「迷惑をかけたくない」からこそ、元気なうちに備えておく。
これが、本当の意味での「思いやり」ではないでしょうか。
9. まとめ:2050年を見据えた「新たな暮らし方のモデル」
朝日新聞の記事が示すように、2050年には単身世帯が44.3%に達します。
これは、おひとり様の老後が「特殊なケース」ではなく、「標準的なライフスタイル」になることを意味しています。
だからこそ、私たちは「新たな暮らし方のモデル」を今から構築していく必要があります。
新たな暮らし方のモデルとは
・家族だけに頼らず、専門家や社会資源を活用する
・元気なうちに、法的な備えを整えておく
・「迷惑をかけたくない」を行動に変える
・孤独ではなく、「自立した生き方」として捉える
50歳を過ぎたおひとり様の皆さん、2050年まであと24年です。人生100年時代、50歳はまだ折り返し地点。残りの人生を安心して、そして自分らしく過ごすために、今から備えましょう。
・何から始めたらいいか分からない
・相談できる相手がいない
・自分の場合はどうすればいいの?
そんな時こそ、専門家にご相談ください。市役所での実務経験を活かし、皆さんの不安に寄り添いながら、一つひとつ丁寧にサポートさせていただきます。
終活を通じて、安心できる未来と、楽しめるセカンドライフを一緒につくりましょう。
📰 参考記事:増える一人暮らしの高齢者 求められる「新たな暮らし方」のモデルは(朝日新聞)
https://www.asahi.com/articles/ASV17112YV17OXIE040M.html

