目次
- 「子どもに迷惑をかけたくない。その想いを形にする終活」~残された家族が「どうしたらいい?」と迷わないために~
- 人が亡くなった後、家族にはたくさんの「判断」が待っています
- 「分からない」ことが、家族を一番困らせることがあります
- まずは、「どこに何があるのか」を分かるようにする
- 「遺言書」が必要になることもあります
- 遺言書を書いただけでは、終わりではありません
- 相続手続きだけではない「亡くなった後のこと」
- お墓のことも、「家族に任せる」でいいでしょうか
- 「迷惑をかけたくない」から、「迷わせたくない」へ
- 完璧に準備しなくても大丈夫です
- 家族に残したいのは、「手続き」ではなく「安心」
- 次回予告
- 🌸 花笑む終活メッセージ
「子どもに迷惑をかけたくない。その想いを形にする終活」~残された家族が「どうしたらいい?」と迷わないために~
「子どもに迷惑をかけたくないんです。」
終活や遺言のご相談をお受けしていると、本当によく耳にする言葉です。
自分のことは、自分でしておきたい。亡くなった後のことで、子どもたちを困らせたくない。兄弟姉妹で揉めてほしくない。
そんなご家族への想いから、終活を始められる方は少なくありません。
前回は、「判断できる今だからこそ、自分で決める」というお話をしました。
今回は、そこからもう一歩進めてみたいと思います。
自分で決めたことを、どのように残しておけばよいのか。
そして、「子どもに迷惑をかけたくない」という想いを、どうすれば具体的な準備に変えることができるのか。
一緒に考えてみましょう。
人が亡くなった後、家族にはたくさんの「判断」が待っています
大切な人を亡くした直後。ご家族は悲しみの中にいます。
けれど、現実には、その直後からさまざまなことを決めなければなりません。
葬儀はどうするのか。誰に連絡するのか。お墓はどうするのか。
その後も、預貯金や保険の確認。年金などの手続き。相続人の確認。不動産の確認。遺品の整理。そして、財産を誰がどのように相続するのか。
やらなければならないことが次々と出てきます。
その中で、ご家族を特に悩ませるものがあります。
それは、「本人は、どうしてほしかったのだろう。」ということです。
「分からない」ことが、家族を一番困らせることがあります
例えば、預貯金。
「どこの銀行に口座があるの?」
生命保険。
「保険に入っていたような気がするけれど、どこの会社?」
不動産。
「この土地は誰の名義?」
お墓。
「このお墓は将来どうしてほしいと思っていたの?」
葬儀。
「家族だけで静かに送りたかったのか、それともお世話になった方にも知らせてほしかったのか。」
ご本人に聞くことができれば、すぐに分かることです。
けれど、亡くなった後には聞くことができません。
だからこそ私は、終活で大切なのは、すべてを完璧に準備することではなく、「家族が迷うことを、一つでも減らしておくこと」だと思っています。
まずは、「どこに何があるのか」を分かるようにする
終活というと、すぐに遺言書を思い浮かべる方もいらっしゃいます。
もちろん遺言書は大切です。でも、その前にできることがあります。
例えば、預貯金。生命保険。不動産。年金。大切な契約。連絡してほしい人。お墓や菩提寺について。
これらについて、「何があるのか」「どこにあるのか」を整理しておくだけでも、ご家族の負担は変わります。
そこで役立つのが「ゆいごん白書」です。
ゆいごん白書では、60の質問にチェックしながら、預貯金・保険・不動産などの財産だけでなく、医療・介護・お墓などについても、ご自身の情報や希望を整理していきます。
さらに、身元確認シートや緊急連絡カード、専門用語を解説した「知っとこノート」、記載欄をまとめた「あんしん覚書ノート」なども備えられています。
「何から整理したらいいのか分からない」という方でも、一つずつ確認しながら進めることができます。
「遺言書」が必要になることもあります
情報を整理することと、法律上の意思を残すことは別です。
例えば、「自宅は長男に相続させたい。」「この預金は長女に相続させたい。」「相続人ではない、お世話になった人へ財産を遺したい。」
こうした財産の承継について、ご自身の意思を法的な形で残すためには、遺言書が重要になります。
そして、遺言書を作るときには、「誰に何を遺すか」だけではなく、「なぜそうしたのか」まで考えていただきたいと思っています。
前回までにもお話しした「付言事項」です。
財産の分け方だけを見ると、「どうして姉の方が多いの?」「なぜ自分にはこの財産なの?」と感じることがあるかもしれません。
でも、そこに本人の言葉があれば、受け止め方が変わることがあります。
「あなたには、こういう理由でこの財産を託します。」
「みんなのことを考えて、このように決めました。」
そんな言葉が、ご本人が亡くなった後の家族をつなぐこともあるのです。
遺言書を書いただけでは、終わりではありません
もう一つ、考えておきたいことがあります。
遺言書を作った後、「その遺言を誰が実現するのか」ということです。
遺言書の内容を実現するために必要な手続きを行う人を「遺言執行者」といいます。
遺言の内容によっては、預貯金などの手続きや、遺贈を実現するための手続きなどが必要になります。
「遺言書を書いたから、あとは家族が何とかしてくれる。」
ではなく、「この想いを、最後まで誰に託すのか。」
そこまで考えておくことも、家族の負担を減らす一つの方法です。
相続手続きだけではない「亡くなった後のこと」
そして、亡くなった後に必要なのは、相続手続きだけではありません。
例えば、葬儀や納骨に関すること。住まいの片付け。公共料金などの契約に関する手続き。身の回りの品の整理。デジタル機器やインターネット上の契約。ペットのこと。
こうしたことは、遺言書だけですべて解決できるものではありません。
特に、おひとり様や、身近に頼れるご家族がいない方の場合、「私が亡くなった後、誰がしてくれるのだろう。」という問題があります。
そのような場合には、「死後事務委任契約」という方法を検討することもあります。
生前に、亡くなった後にしてほしいことを整理し、それを託す人と契約しておく方法です。
ここでも大切なのは、制度から考えることではありません。
まず、「私は、亡くなった後のことをどうしてほしいのか。」を考えることです。
その希望に応じて、遺言書なのか、遺言執行者なのか、死後事務委任なのか。
必要な準備を組み合わせていきます。
お墓のことも、「家族に任せる」でいいでしょうか
終活では、お墓についても考えていただきたいと思っています。
「うちにはお墓があるから大丈夫。」
そう思っていても、誰がお墓を守っていくのか。子どもは遠方に住んでいないか。将来、お墓参りを続けられるのか。墓じまいをするのか。永代供養を考えるのか。
家族で一度も話したことがない、というケースもあります。
お墓は、単なる「場所」ではありません。
ご家族にとっては、ご供養の気持ちにも関わることです。
だからこそ、「私はこうしてほしいと思っている。」と伝えておくだけでも、ご家族にとって大きな手掛かりになります。
「迷惑をかけたくない」から、「迷わせたくない」へ
私は、「子どもに迷惑をかけたくない」という言葉を聞くたびに思うことがあります。
人は、一人では生きていけません。
年齢を重ねれば、誰かの手を借りることもあるでしょう。病気になれば、家族に助けてもらうこともあるかもしれません。
ですから、「誰にも迷惑をかけない人生」を目指さなくてもいいのではないでしょうか。
その代わりに、「大切な人を、できるだけ迷わせない。」
そのための準備をしておく。
私は、それも終活の大切な役割だと思っています。
「何を望んでいたのか分からない。」「どこに何があるのか分からない。」「兄弟でどう決めればいいのか分からない。」
そんな「分からない」を、一つでも減らしておく。
それだけでも、残されたご家族への大きな贈り物になります。
完璧に準備しなくても大丈夫です
ここまで読むと、「こんなにたくさん準備しないといけないの?」と思われるかもしれません。
でも、すべてを一度にする必要はありません。
まずは、自分の財産を確認する。家族に一つ希望を伝えてみる。保険証券の場所を整理する。お墓について話してみる。終活ノートを一ページ書いてみる。
それでいいのです。
終活は、一日で完成させるものではありません。
年齢や家族の状況、自分自身の気持ちが変われば、見直していけばよいのです。
大切なのは、「いつかやろう」から、「一つだけやってみよう」へ。
その一歩を踏み出すことです。
家族に残したいのは、「手続き」ではなく「安心」
財産をきれいに整理する。遺言書を作る。お墓について決める。死後のことを託す。
これらはすべて「手続き」です。
でも、その先にある目的は、手続きを完成させることではないと私は思っています。
その目的は、ご自身が安心して、これからの人生を生きること。
そして、大切な人に、できるだけ安心を残すこと。
ではないでしょうか。
「子どもに迷惑をかけたくない。」
その優しい気持ちを、心配のままで終わらせず、「だから、今できることを一つしておこう。」という行動に変えてみませんか。
それが、ご自身から大切な人へ贈ることのできる、もう一つの「相続」なのかもしれません。
次回予告
次回、第5回は、
「終活は、一人で悩まなくていい。」
~海泉寺『終活大相談会』を開催します~
をお届けします。
ここまで4回にわたり、「終活の始め方」「想いを遺すこと」「自分で決めること」「家族が迷わないための準備」についてお話ししてきました。
けれど、実際に準備を始めると、「遺言書は誰に相談するの?」「相続税は?」「不動産は?」「お墓は?」「葬儀は?」と、また新しい疑問が出てきます。
そこで9月5日・27日、海泉寺に、終活に関わるさまざまな専門家が集まります。
「どこに相談したらいいのか分からない。」
その不安をなくすために企画した「終活大相談会」。
次回は、なぜこの相談会を開催することにしたのか、そして、どんな専門家に何を相談できるのかを詳しくご紹介します。
🌸 花笑む終活メッセージ
「子どもに迷惑をかけたくない。」
その言葉の奥にあるのは、きっと、大切な人を想う気持ちです。
すべてを完璧に準備する必要はありません。
ただ、「私はこうしてほしい。」その想いを一つ伝えておく。
「これはここにあるよ。」と、一つ整理しておく。
その小さな準備が、いつか大切な人を助けるかもしれません。
終活とは、人生を閉じる準備ではありません。
自分の安心と、大切な人の安心を、今から少しずつつくっていくこと。
今日の小さな一歩が、いつか大切な人への優しい贈り物になりますように。
行政書士奥村オフィス
行政書士 奥村 多恵子

