終活は、人生をより良く生きる準備。~行政書士奥村多恵子の終活コラム~第4回

終活は、人生をより良く生きる準備。~行政書士奥村多恵子の終活コラム~第4回

「子どもに迷惑をかけたくない。その想いを形にする終活」~残された家族が「どうしたらいい?」と迷わないために~

「子どもに迷惑をかけたくないんです。」

終活や遺言のご相談をお受けしていると、本当によく耳にする言葉です。

自分のことは、自分でしておきたい。亡くなった後のことで、子どもたちを困らせたくない。兄弟姉妹で揉めてほしくない。

そんなご家族への想いから、終活を始められる方は少なくありません。

前回は、「判断できる今だからこそ、自分で決める」というお話をしました。

今回は、そこからもう一歩進めてみたいと思います。

自分で決めたことを、どのように残しておけばよいのか。

そして、「子どもに迷惑をかけたくない」という想いを、どうすれば具体的な準備に変えることができるのか。

一緒に考えてみましょう。

人が亡くなった後、家族にはたくさんの「判断」が待っています

大切な人を亡くした直後。ご家族は悲しみの中にいます。

けれど、現実には、その直後からさまざまなことを決めなければなりません。

葬儀はどうするのか。誰に連絡するのか。お墓はどうするのか。

その後も、預貯金や保険の確認。年金などの手続き。相続人の確認。不動産の確認。遺品の整理。そして、財産を誰がどのように相続するのか。

やらなければならないことが次々と出てきます。

その中で、ご家族を特に悩ませるものがあります。

それは、「本人は、どうしてほしかったのだろう。」ということです。

「分からない」ことが、家族を一番困らせることがあります

例えば、預貯金。

「どこの銀行に口座があるの?」

生命保険。

「保険に入っていたような気がするけれど、どこの会社?」

不動産。

「この土地は誰の名義?」

お墓。

「このお墓は将来どうしてほしいと思っていたの?」

葬儀。

「家族だけで静かに送りたかったのか、それともお世話になった方にも知らせてほしかったのか。」

ご本人に聞くことができれば、すぐに分かることです。

けれど、亡くなった後には聞くことができません。

だからこそ私は、終活で大切なのは、すべてを完璧に準備することではなく、「家族が迷うことを、一つでも減らしておくこと」だと思っています。

まずは、「どこに何があるのか」を分かるようにする

終活というと、すぐに遺言書を思い浮かべる方もいらっしゃいます。

もちろん遺言書は大切です。でも、その前にできることがあります。

例えば、預貯金。生命保険。不動産。年金。大切な契約。連絡してほしい人。お墓や菩提寺について。

これらについて、「何があるのか」「どこにあるのか」を整理しておくだけでも、ご家族の負担は変わります。

そこで役立つのが「ゆいごん白書」です。

ゆいごん白書では、60の質問にチェックしながら、預貯金・保険・不動産などの財産だけでなく、医療・介護・お墓などについても、ご自身の情報や希望を整理していきます。

さらに、身元確認シートや緊急連絡カード、専門用語を解説した「知っとこノート」、記載欄をまとめた「あんしん覚書ノート」なども備えられています。

「何から整理したらいいのか分からない」という方でも、一つずつ確認しながら進めることができます。

「遺言書」が必要になることもあります

情報を整理することと、法律上の意思を残すことは別です。

例えば、「自宅は長男に相続させたい。」「この預金は長女に相続させたい。」「相続人ではない、お世話になった人へ財産を遺したい。」

こうした財産の承継について、ご自身の意思を法的な形で残すためには、遺言書が重要になります。

そして、遺言書を作るときには、「誰に何を遺すか」だけではなく、「なぜそうしたのか」まで考えていただきたいと思っています。

前回までにもお話しした「付言事項」です。

財産の分け方だけを見ると、「どうして姉の方が多いの?」「なぜ自分にはこの財産なの?」と感じることがあるかもしれません。

でも、そこに本人の言葉があれば、受け止め方が変わることがあります。

「あなたには、こういう理由でこの財産を託します。」

「みんなのことを考えて、このように決めました。」

そんな言葉が、ご本人が亡くなった後の家族をつなぐこともあるのです。

遺言書を書いただけでは、終わりではありません

もう一つ、考えておきたいことがあります。

遺言書を作った後、「その遺言を誰が実現するのか」ということです。

遺言書の内容を実現するために必要な手続きを行う人を「遺言執行者」といいます。

遺言の内容によっては、預貯金などの手続きや、遺贈を実現するための手続きなどが必要になります。

「遺言書を書いたから、あとは家族が何とかしてくれる。」

ではなく、「この想いを、最後まで誰に託すのか。」

そこまで考えておくことも、家族の負担を減らす一つの方法です。

相続手続きだけではない「亡くなった後のこと」

そして、亡くなった後に必要なのは、相続手続きだけではありません。

例えば、葬儀や納骨に関すること。住まいの片付け。公共料金などの契約に関する手続き。身の回りの品の整理。デジタル機器やインターネット上の契約。ペットのこと。

こうしたことは、遺言書だけですべて解決できるものではありません。

特に、おひとり様や、身近に頼れるご家族がいない方の場合、「私が亡くなった後、誰がしてくれるのだろう。」という問題があります。

そのような場合には、「死後事務委任契約」という方法を検討することもあります。

生前に、亡くなった後にしてほしいことを整理し、それを託す人と契約しておく方法です。

ここでも大切なのは、制度から考えることではありません。

まず、「私は、亡くなった後のことをどうしてほしいのか。」を考えることです。

その希望に応じて、遺言書なのか、遺言執行者なのか、死後事務委任なのか。

必要な準備を組み合わせていきます。

お墓のことも、「家族に任せる」でいいでしょうか

終活では、お墓についても考えていただきたいと思っています。

「うちにはお墓があるから大丈夫。」

そう思っていても、誰がお墓を守っていくのか。子どもは遠方に住んでいないか。将来、お墓参りを続けられるのか。墓じまいをするのか。永代供養を考えるのか。

家族で一度も話したことがない、というケースもあります。

お墓は、単なる「場所」ではありません。

ご家族にとっては、ご供養の気持ちにも関わることです。

だからこそ、「私はこうしてほしいと思っている。」と伝えておくだけでも、ご家族にとって大きな手掛かりになります。

「迷惑をかけたくない」から、「迷わせたくない」へ

私は、「子どもに迷惑をかけたくない」という言葉を聞くたびに思うことがあります。

人は、一人では生きていけません。

年齢を重ねれば、誰かの手を借りることもあるでしょう。病気になれば、家族に助けてもらうこともあるかもしれません。

ですから、「誰にも迷惑をかけない人生」を目指さなくてもいいのではないでしょうか。

その代わりに、「大切な人を、できるだけ迷わせない。」

そのための準備をしておく。

私は、それも終活の大切な役割だと思っています。

「何を望んでいたのか分からない。」「どこに何があるのか分からない。」「兄弟でどう決めればいいのか分からない。」

そんな「分からない」を、一つでも減らしておく。

それだけでも、残されたご家族への大きな贈り物になります。

完璧に準備しなくても大丈夫です

ここまで読むと、「こんなにたくさん準備しないといけないの?」と思われるかもしれません。

でも、すべてを一度にする必要はありません。

まずは、自分の財産を確認する。家族に一つ希望を伝えてみる。保険証券の場所を整理する。お墓について話してみる。終活ノートを一ページ書いてみる。

それでいいのです。

終活は、一日で完成させるものではありません。

年齢や家族の状況、自分自身の気持ちが変われば、見直していけばよいのです。

大切なのは、「いつかやろう」から、「一つだけやってみよう」へ。

その一歩を踏み出すことです。

家族に残したいのは、「手続き」ではなく「安心」

財産をきれいに整理する。遺言書を作る。お墓について決める。死後のことを託す。

これらはすべて「手続き」です。

でも、その先にある目的は、手続きを完成させることではないと私は思っています。

その目的は、ご自身が安心して、これからの人生を生きること。

そして、大切な人に、できるだけ安心を残すこと。

ではないでしょうか。

「子どもに迷惑をかけたくない。」

その優しい気持ちを、心配のままで終わらせず、「だから、今できることを一つしておこう。」という行動に変えてみませんか。

それが、ご自身から大切な人へ贈ることのできる、もう一つの「相続」なのかもしれません。

次回予告

次回、第5回は、

「終活は、一人で悩まなくていい。」

~海泉寺『終活大相談会』を開催します~

をお届けします。

ここまで4回にわたり、「終活の始め方」「想いを遺すこと」「自分で決めること」「家族が迷わないための準備」についてお話ししてきました。

けれど、実際に準備を始めると、「遺言書は誰に相談するの?」「相続税は?」「不動産は?」「お墓は?」「葬儀は?」と、また新しい疑問が出てきます。

そこで9月5日・27日、海泉寺に、終活に関わるさまざまな専門家が集まります。

「どこに相談したらいいのか分からない。」

その不安をなくすために企画した「終活大相談会」。

次回は、なぜこの相談会を開催することにしたのか、そして、どんな専門家に何を相談できるのかを詳しくご紹介します。

🌸 花笑む終活メッセージ

「子どもに迷惑をかけたくない。」

その言葉の奥にあるのは、きっと、大切な人を想う気持ちです。

すべてを完璧に準備する必要はありません。

ただ、「私はこうしてほしい。」その想いを一つ伝えておく。

「これはここにあるよ。」と、一つ整理しておく。

その小さな準備が、いつか大切な人を助けるかもしれません。

終活とは、人生を閉じる準備ではありません。

自分の安心と、大切な人の安心を、今から少しずつつくっていくこと。

今日の小さな一歩が、いつか大切な人への優しい贈り物になりますように。

行政書士奥村オフィス
行政書士 奥村 多恵子